英・伊・米の国別に見る。スーツの特徴と定番ブランド

スーツの本場はイギリス、イタリア、アメリカの3国が代表的です。それぞれの国によって、スーツスタイルは微妙に異なるってご存じですか? そこで国別に特徴をご紹介!

池田 やすゆき

2017.02.13

スーツスタイルは、お国柄でちょっとずつ違います

現在のスーツの原型が誕生したのは今から200年ほど前のイギリスといわれています。意外と歴史は浅いんです。そもそもは王侯貴族の正装が原型で、やがてその服を庶民がまねることで広がりました。つまり当時は、王侯貴族がファッションリーダーだったわけです。

やがて国外にも広がり、それぞれの国の文化に合わせた進化があらわれます。「なかでもそれが顕著だったのは、イタリアとアメリカ。今回はこの3カ国スーツの違いについて、ご紹介します。

スーツの正統派はイギリス式

イギリスは、現代のスーツの原型が誕生した地です。今もなお貴族文化が残っていて「生まれてこの方、ジーンズをはいたこともなければ、働いたこともない」という人がいるほど階級意識の高いお国柄。それゆえ、今でもイギリスの「サヴィルロウ」という通りには、昔ながらの作り方を頑なに守り続けるスーツ職人がいます。

分厚い肩パッド、イングリッシュドレープと呼ばれる立体的な胸周り、ちょっと長めの着丈といったディテールは、昔ながらのイギリス式ではありますが、さすがに古クサいので今探すほうが難しいです。昔のイギリス紳士を気取ったコスプレ的なスーツならなきにしもですが……。

今の時代の「イギリス式」といえば、昔のイギリススーツのエッセンスを現代的にアップデートしたデザインのことをいいます。その特徴は以下のとおり。

特徴1くすんだ色と重厚な素材

最も"イギリスのスーツらしさ”を感じさせるのは、なんといっても素材使いです。古くから毛織物産業が盛んだった国だけに、イギリス生地はとても個性的です。ツイードやフランネルに代表されるように、ちょっと分厚くゴワつく感じで、糸がみっちり織り込まれているので生地にコシが強いものが多いのです。

色はくすんだトーンが多く、鮮やかな明るい色は少ないですね。柄はチェック柄に特徴があって、グレンチェックやプリンスオブウェールズなど、イギリス由来の名称のものも少なくありません。

しかしながら今日は、イギリスの毛織物産業は衰退気味で、イギリス国外でイギリス生地っぽく織り上げたものも多く出回っています。いや、むしろそちらのほうが多いかもしれません。

特徴2スラント&チェンジポケット

斜めになっているポケットのことを「スラントポケット」といいます。これはイギリスのスーツに顕著なデザインで、英国調の味付けによく使われるデザインです。ちなみに、馬に乗るときにポケットが斜めになっているほうが物が取り出しやすいというアイデアから生まれたもので、「ハッキングポケット(ハッキングとは、馬を駆る意)」とも呼ばれます。

また、右腰についた2段ポケットのうち、上の小さいほうのポケットを「チェンジポケット」といいます。こちらのデザインもイギリス式によく見られますよ。

特徴3ベルトレスパンツ

ベルトレスパンツも今年よく見られるイギリス風の特徴です。なぜかといえば、もともと採寸してオーダーするのが当たり前だったスーツは、ベルトなんかしなくてもぴったりウェストが収まるからです。オーダースーツ文化が生まれた昔のイギリスでは、パンツはベルトなんかしないわけで、どうしてもずり下がるならブレイシーズ(サスペンダー)を使ったわけです。

最近はイギリス風のディテールを採用したスーツが人気とあって、組下パンツがベルトレスというスーツもでてきています。

▼イギリス式の着こなしの特徴は?

イギリス式のスーツの特徴がわかったところで、着こなしのポイントも押さえていきましょう。構築的なデザインのイギリスだからこそ、クラシックで重厚感ある着こなしが特徴です。

着こなしの特徴1ピンホール&タブカラーのシャツを合わせる

シャツの襟元をピンで閉じたり、襟羽根に取り付けられたタブをとめてタイトに着るシャツはイギリス式のフォーマルウェアの着方といわれます。そもそも、きっちりとした着方を好むのがイギリス式ですので、ピンホール&タブカラーの由来の真偽はともかくとして、正統なイギリス式ドレススタイルとしてのタイドアップにこのようなシャツを合わせるのは理にかなっているといます。

着こなしの特徴2黒のドレスシューズを合わせる

イギリスで茶靴を初めて作ったのは、オーナーが変わってからの『エドワードグリーン』だといわれるほど、ネイビースーツだろうと、グレースーツだろうと、イギリス式に着るなら黒靴を合わせるのがお約束です。グッドイヤーウェルトのレースアップシューズ、もしくはダブルモンクストラップシューズに限ります。もちろん素足履きなんてのはイギリスではありえません。

▼代表的なイギリスブランドはこちら

イギリス式スーツといえば間違いない、王道の3ブランドをご紹介します。スーツをかっちりきちんと着こなしたい人におすすめ。

ブランド1『ハケット・ロンドン』

俳優を目指していたジェレミー・ハケット氏は、古着好きが昂じてヴィンテージクロージングのバイヤーを経て、サヴィル・ロウでテーラーとして修行後、1983年に自身のブランドを設立。伝統的なイギリスのテーラードスーツやユニフォームをベースに、現代的に進化させたドレスウェアのコレクションを展開しています。

ブランド2『マッキントッシュ ロンドン』

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ゴム引きの防水布を使ったレインコートにはじまるブランド『マッキントッシュ』。よりモダンなコレクションへと進化したメインコレクションに対して、イギリスの伝統を受け継ぐフルコレクションを揃えるのが『マッキントッシュ ロンドン』 です。イギリスに固執するのではなく、海外からも素材やトレンドを取り入れながら、独自の「英国紳士」を描くラインアップです。

ブランド3『バーバリー』

耐久性と防水性を備えるギャバジンを生み出し、レインコートブランドとしてスタートした『バーバリー』も、イギリス伝統のスピリッツを今に伝えるブランドです。メインラインはクリストファー・ベイリーがクリエイティブディレクターとして指揮を執る『バーバリー ブローサム』。クラシックなスーツを揃えるコレクションは『バーバリー ロンドン』のブランド名を採用しており、よりモダンなブリティッシュモダンを追求しています。

インターナショナルな北イタリア&独自の色気を追求する南イタリア

イタリアもスーツ大国として知られていますが、ミラノを中心とする北イタリアと、ナポリを中心とする南イタリアではスーツの表現の仕方が少し違います。北イタリアは国際都市であるミラノらしく、どちらかというとクセのないスタンダードなスーツが主流です。対して南イタリアは、職人が技術力を競い合い個性あふれるスーツが百花繚乱です。ともにしなやかな生地と、やわらかな芯地を使った軽い着心地が特徴的です。

特徴1バルカポケット

「バルカ」とは、「舟底」の意で、バルカポケットとはジャケットの胸ポケットが舟のように、カーブしている形状を指します。カーブしていることで胸のカーブに添いやすいなどといいますが、実際はナポリの職人たちが腕前を自慢するため(カーブ型のポケット口は取り付けが難しいそう)に始めたという説が有力です。

特徴2本切羽

ジャケットの袖口のボタンが、はずせるように仕立てているのを「本切羽」といいます。実際に袖口を開けることはあまりないので、これもナポリ職人がボタンホールのかがり糸を、いかに美しく縫い上げられるかを競った名残とされています。ちなみにイギリスのスーツでは、高級オーダースーツでもここは閉じたままのものが少なくありません。

特徴3アンコン仕立て

「アンコン」とは「アンコンストラクテッド(非構築的)」の意で、芯地やパッドを省いて仕立てたジャケットのことをいいます。イタリア語では「スフォデラート」とか「マッピーナ」とか種類によって呼び方もさまざまにあります。近年は肩パッドはほぼ使われなくなってきましたし、芯地も硬いバス芯ではなく薄手でやわらかなものが主流です。ジャケットの肩部分をつまんでみて、ふわふわした副資材が入ってなければ、アンコン仕立てと思ってよいでしょう。

▼イタリア式の着こなしの特徴は?

では、イタリアならではの着こなしをご紹介。構築的でかっちりとしたイギリス式と比べ、適度にラフさがある軽やかな着こなしが魅力的です。

着こなしの特徴1シャツは襟羽根のカラーステーを抜く

アンコン仕立てのジャケットは、見た目にもソフトコンシャスですので、ここに襟羽根をのりでびしっと固めたシャツはアンバランスです。当然、襟裏のカラーステーも抜きましょう。やわらかなスーツにはやわらかな襟のシャツ。ネクタイもディンプルを入れて、適度にラフに結ぶくらいがちょうどいいのです。

着こなしの特徴2テーパードパンツはくるぶし丈で

今最もイタリアらしいスーツの特徴は、テーパードパンツのシルエットではないでしょうか。ちょっと前は「膝下ストレートの美脚シルエット」なんていってましたが、最新は「腰回りプリーツ入りの膝下テーパード」です。

はき方としては、昔のようなワンクッションとかハーフクッションではなく、くるぶしが見えるくらいの短め丈で、当然靴は素足履き。これぞ最新のイタリアスーツなのです。

▼代表的なイタリアブランドはこちら

やわらかい生地を使用した軽い着心地が魅力のイタリア式スーツ。押さえておくべき3大イタリアブランドはこちら!

ブランド1『ラルディーニ』

ラペルにあしらったアイコンの花飾りがアイコニックで人気を集める一因となった『ラルディーニ』。アンコーナのファクトリーから、アンコンブームをけん引する存在へと躍り出ました。素材のバリエーションが多いことで知られ、仕立ては今風イタリアでもイギリス風の色柄生地を使ったコレクションも多く見られます。

ブランド2『タリアトーレ』

イタリアの踵に当たるプーリア州のファクトリー。ファッショニスタとしても知られるオーナーのピーノ・レラリオ氏が、自ら生地を裁断し、ミシンを使うというフットワークの軽さで、今最も先鋭的なメンズクロージングを生み出しているブランドです。生地の開発にも余念がなく、これまでのメンズテキスタイルの常識を覆すラインアップは、新たなイタリアン・クラシコを生み出したといわれています。

ブランド3『ガブリエレ・パジーニ』

「モデナの怪人」の異名を持つガブリエレ・パジーニ氏が手がけるブランド。ジャケット&スーツがメインですが、大胆な色柄や、素肌にベストを着るスリーピースなど、アバンギャルドなことこの上ないスタイリングが話題となっています。しかし、きっちりタイドアップすれば、意外に真面目に見えるものです。先日、インテルの長友佑都選手と平愛梨さんの婚約発表記者会見や、その後のテレビ出演で長友さんが着ていたスーツはすべてこのブランドのものでした。

実用と効率から生まれたアメリカンスーツ

大量生産・大量消費をけん引してきたアメリカでは、一人ひとりにオーダースーツを仕立てていくなんていうまどろっこしいことをしていられなかったので、生産効率を重視して工場で大量に既製品のスーツを作ることを目指しました。そこで職人が手仕事で行う細かい部分や作業時間のかかる工程を簡易化した、誰にでも似合うスーツを作り出します。

それがフロントダーツを排して、ウェストの絞りを緩く設定した「サックスーツ」と呼ばれるモデルです。後のアイビールックに通じるデザインで、アメリカントラッドの老舗ブランドは、今もサックスーツを作り続けています。

特徴1ラペルエッジに連続ステッチ入り

ラペルのエッジのステッチは、見えないほどドレッシーだとされています。つまり袋状に縫い上げているものが、最もフォーマルなわけです。効率重視のアメリカンスーツは、このラペルエッジのステッチを、ミシンで一気に縫い上げています。そのためエッジの内側に糸目が連続しています。これがあることでルックスはドレス向きというより、カジュアル向きなものとなるのです。

特徴2フロントダーツのないサックスーツ

ジャケットのフロント左右にダーツと呼ばれるつまみ縫いの跡がありますが、アメリカントラッドなスーツにはこれがありません。本来はこのダーツでウェストを絞り込むことでウェストをくびれさせるのですが、それってつまりおなか周りがたるんできたことを隠すための仕様ですね。おなかの大きな人でも着られるようユニバーサルデザインを目指した結果のアメリカントラッドですが、このダーツのない袋のような形状をサック(=袋)スーツと呼ぶのです。

▼アメリカ式の着こなしの特徴は?

アメリカンスタイルは、イギリスやイタリアと比べてカジュアルな着こなしが印象的です。早速ポイントを見ていきましょう。

着こなしの特徴1BDシャツ×アメリカンストライプタイ

アメリカ式スーツを代表するサックスーツは、アメリカントラッドの老舗『ブルックスブラザーズ』が開発したスーツです。それに加えてアメトラアイテムがもう2つあるのですが、それがボタンダウンシャツとアメリカンストライプタイです。

ボタンダウンシャツは、襟羽根がボタンで身頃にとめられているシャツのことで、もともとはイギリスで誕生しました。アメリカ式のボタンダウンカラーは、襟羽根が短くカジュアルに見えるところが特長なので、カジュアル風味のアメリカ式のスーツによく合います。ちなみにイタリアのシャツブランドのボタンダウンは襟羽根が長く、ドレスシャツの襟をボタンでとめたようになっているので、ちょっと趣が違うんですよ。

また斜めストライプのレジメンタルタイは、本来は英国軍の所属に合わせて色柄や縞幅を決めたもので向かって右上から左下へ流れるものをいいます。これに対して、アメリカンストライプはレジメンタルと逆の模様で、左上から右下に縞模様が流れます。

ともにブルックスブラザーズがサックスーツに合わせるシャツ&タイとしてリリースしたものですので、この3アイテムでコーディネートすれば、間違いなくアメリカンなスーツスタイルが完成します。

着こなしの特徴2:チェックシャツ&ニットタイ

ギンガムチェックやマドラスチェックなど、アメリカンカジュアルにも多用されるカジュアルなシャツに、これまたカジュアルなニットタイを合わせるのも、アメリカンスーツを着こなすのに適しています。

ブロードの白シャツ&シルクのタイで、ドレッシーにまとめるより、ちょっと力を抜いたリラックスしたスーツスタイルがアメリカンな印象なのです。ちなみに最近のアメリカントラッドブランドも、ドレッシーなラインはイタリアのファクトリーに依頼していることが多いですね。実用的で効率的なものが大好きなアメリカ人には、人の手の温もりや味のあるスーツより、きっちりかっちりと作られたクオリティーのスーツが似合うようです。

▼代表的なアメリカブランドはこちら

王道のアメリカブランドをご紹介。アメトラの老舗『ブルックスブラザーズ』をはじめ、なじみのあるブランドばかり!

ブランド1『ブルックスブラザーズ』

歴代大統領を顧客に持つ1818年、ニューヨークで創業したアメリカントラッドの老舗。工場で効率的に仕立てることを前提に誕生したサックスーツをはじめ、ボタンダウンシャツやアメリカンストライプタイなど、現代のアメリカントラッドの基礎を生み出したブランドです。

ブランド2 『ラルフローレン』

1968年にネクタイブランドとしてスタートした『ラルフローレン』は、いまやデニムからモードまで幅広いコレクションを揃えるトータルブランド。ヴィンテージウェアからインスパイアされたカジュアルウェア中心の「ポロ」や、最高級のフォーマルウェアを揃える「パープルレーベル」など、カテゴリーごとにブランドとして独立させている。

ブランド3『ポールスチュアート』

1938年、ニューヨークに誕生したポールスチュアートは、世界中の良質なファクトリーに自社製品を依頼するという形態で誕生したブランド。そのためイギリスやイタリアなど、ヨーロピアンテイストのコレクションを多数揃え、いわゆるアメリカントラッドとはひと味違うモダンなスタイルを提案している。アメリカ本国の店舗数は大都市に限られるが、日本では大小さまざまなインショップを展開。

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