モヘアを味方につけた大人はゆとりも手にする

モヘアを味方につけた大人はゆとりも手にする

モヘア素材はその見た目から秋冬ものと思いがち。が、実は夏にもうってつけで”夏スーツ=モヘア混”が定石とされるほど。ここに暑さを迎え撃つヒントが隠されているのだ。

菊地 亮

2015.07.19

アウター
スーツ
テーラードジャケット

外見と中身のギャップにこそモヘア素材の魅力がある

「クラッシュやピストルズが青春の1ページ」なんて方にとって、モヘアのニットは欠かせない存在だったに違いない。例えそうでなくとも、秋冬の定番素材という見方が一般的だろう。しかし、中身を知ると夏にも使える素材ということに気づく。それだけ見方が変われば、今後のアイテム選びや着こなしの幅も広がるはずだ。

モヘアって何?ウールの一種ではあるがウールではないモヘア

広義で言えばウールに属していると言える。ただ、ウールとひとえに言っても羊、山羊、アルパカ、ラクダなど種類は多彩。それを日本ではひとえにウールと呼んでいるが、世界では羊を羊毛(ウール)、アルパカや山羊を獣毛(ヘアー)と分類している。アンゴラ山羊の毛が元になるモヘアも厳密に言えば獣毛(ヘアー)なのだ。

ウールの特徴生まれながらに複雑な構造をもつ天然繊維のキング

ウールは、モヘア同様毛の表面にスケールと呼ばれるうろこ状のヒダが存在する。高温多湿の際には、そこから湿気を放出しその気化熱で涼もとることが可能に。ただ、モヘアと違いウールは糸自体に熱があり、縮れによって生じるスペースに空気を含むことで保温効果も促すことができる素材。よって、主戦場は冬となるのだ。

モヘアの特徴身につけても清々しく、しかもハリがあって丈夫

ウールに比べキューティクルのヒダがそこまで逆立っていないのがモヘア。ゆえにチクチクとした感覚もさほど感じられず、そのうえ獣毛の中でもっとも堅牢な繊維とされている。強度はなんとスチールよりも上と言われ、“ダイヤモンドファイバー”なる別名も。さらに、吸湿性に優れそのポテンシャルはウールの2倍以上とか。

“ピン”よりも“コンビ”の方が実力を発揮する

上の写真を見ても分かるようにモヘア繊維の表面はプレーンな状態。そのため、モヘア100%で織った際には糸同士がスリップ現象を起こし、全体の歪みや型崩れを引き起こす場合も。ただ、他の繊維と織り混ぜればその不安も解消。例えば、凹凸のあるウールとなら、素材自体の特性を生かしつつ1枚の生地としても安定する。

Item1『パオロ ペコラ』のニットジャケット

クラシック志向ながらモダンさも垣間見せる。『パオロ ペコラ』はそのさじ加減が絶妙で、特にニット類は多くの識者からも高い評価を獲得している。この1着からもその魅力の一端は感じられるだろう。モヘアへウールやナイロンをミックスして仕上げた生地は、柔らかな表情を描きながらもしっかりとした耐久性も保持している。

Item2『アルテア』の2Bジャケット

イタリア随一のタイブランド『アルテア』は、最高級シルクをはじめさまざまなテキスタイルを展開していることでも知られる。そんな実力派が仕立てたジャケットだけに、ウールをベースにモヘアを取り入れた生地は実に表情豊かだ。全面に施した英国気質なブラックウォッチ柄も、シックな配色にすることで洗練された趣へ。

Item3『ジーティーアー』のジップフライパンツ

脚線美を促すスラッと伸びたレングスこそ同ブランドの真骨頂と言えるが、こちらはそれだけではない。ウールトロピカルにモヘアを混成した生地は爽やかな履き心地で、薄手に仕上げられているため自然なドレープが起こり、見た目にもエレガントな印象を受ける。モヘアに含まれたカラフルな色糸が、適度なカジュアルさも表現。

Item4『エディフィス』のトラウザー

テーパードの効いた美しいラインと、足元をすっきりとさせたイマドキな9分丈が印象的な1本。さらに、モヘアをミックスさせたことでより顕著に表れた光沢感は、トラウザーの品の良さと華やかさをさらに引き出している。また、ウエスト周りにダーツを加えたことで適度なゆとりを生み出し、履きやすさもしっかりとフォロー。

隙のないビジネススタイルへの1歩はモヘア混スーツ

クールビズが浸透してはいるものの、「ポロシャツではバツが悪い」「ノーネクタイじゃしまらない」といったシーンは往々にしてある。となれば、やはり品行方正なスーツが正統となるが、そこで腑抜けた姿を見せては本末転倒。そこで暑熱対策にもひと役買うモヘア混スーツの出番。その代表格をここで取り上げたい。

Item1『アットリーニ』のスーツ

『キットン』と並び称されるイタリアきってのサルトリアブランド。こちらは春夏にピッタリなモヘアを混紡した、ハリを備えつつ清々しさも感じさせる1着。男らしく張り出したラペルや、やさしいラインを描くショルダーもまた“らしさ”を感じさせる。軽やかさや、肌へ吸いつくような着用感は最高峰の名にふさわしい。

Item2『タリアトーレ』のスーツ

1960年に創業を開始したラレリオ社が母体となり、その2代目のピーノ・レラリオ氏が設立。イタリアファッションを牽引するブランドのひとつで、類まれなるカッティングや素材使いに定評がある。こちらも、シャリ感のあるモヘア混の素材やウエストの高い位置から絞り込んだシルエットなど、その美しさは他の追随を許さない。

Item3『ドーメル』のトニック

『ドーメル』は、現存する最古の服地商社として知られ、トップメゾンへも生地を提供する企業。その名を世界に知らしめた生地こそ、1957年の発表以降爆発的ヒットを記録したトニックだ。こちらはオリジナルの製法を用い、現代的にアレンジしながらモヘア混率30%で復刻させたモノ。しっかりとした打ち込みと軽さが特徴。

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