個性派実用腕時計の殿堂、アメリカ発の名門ブランド

個性派実用腕時計の殿堂、アメリカ発の名門ブランド

ロレックスを筆頭に、世界の時計市場を席巻しているスイスブランド。その一方で、カジュアルウォッチを中心に、根強いファンが存在しているのがアメリカブランドです。

MASAFUMI YASUOKA

2018.02.13

腕時計
機械式

アメリカ発祥のブランドには、ミドルプライスの実用腕時計が目白押し

イギリスやスイスといった時計先進国から技術を取り入れたアメリカ。19世紀半ばより、懐中時計の量産化をはじめ、豊富な資源の後押しもあり、生産数という点ではヨーロッパをしのいでゆきます。その後、技術がさらに発展したきっかけとなったのは、鉄道の発達。現在に続くアメリカンウォッチブランドの多くが、鉄道用時計の生産とともに技術力を高めてゆきます。また、南北戦争や第一次、第二次世界大戦なども、発展のきっかけに。そうした実践的な時計作りをベースにしつつ、かつ当時新興国故に伝統に縛られない実験的なアプローチが、アメリカンウォッチの魅力なのです。

合理的と評されることの多いアメリカンカルチャー。様式美にとらわれず、機能として優れているものを積極的に受け入れています。たとえば『ハミルトン』では、1957年に世界初の電池式腕時計「ベンチュラ」を発売、1960年には『ブローバ』がチューニングフォークや水銀電池などを用いた共鳴振動式腕時計を、これまた世界で初めて作り出しています。このように、アメリカンウォッチには先駆的な考えを持つブランドが多いのが魅力です。しかし昨今は、アメリカ生産を採用する新ブランド『シャイノラ』がデトロイトから誕生するなど、合理的な一方で古き良きアメリカンクラフトマンシップにこだわった取り組みも多く見られています。

アメリカンウォッチの歴史を語る上で欠かせない、5つのブランド

スイスの腕時計が伝統と職人技術に裏打ちされたものであるならば、アメリカ発のウォッチブランドは挑戦と開拓精神の結晶。鉄道の普及や宇宙開発など、世界の最先端を担ってきたアメリカの技術革新を支えた5つのブランドを解説していきます。

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ブランド1その歴史も実績も、まさしくアメリカンウォッチの金字塔『ハミルトン』

創業は1892年。2017年に60周年を迎えた世界初の電池式時計ベンチュラやLED時計の祖パルサーなど、アメリカらしい開拓精神を誇りとしています。とくに鉄道時計においては、19世紀末に急務となっていた正確な時刻管理を『ハミルトン』が公認鉄道時計として支えました。また、今なお人気モデルとして支持されている、カーキシリーズに代表されるミリタリーウォッチの名作も多数。まさに、米国の顔役といっても差し支えない『ハミルトン』。エルビス・プレスリー氏やウィル・スミス氏をはじめ、多くのスターが身につけているのもその証しといえます。

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カーキ・オフィサー

第二次世界大戦中、米軍に腕時計を納入していた『ハミルトン』。そのノウハウを投入し完成させたのが、カーキシリーズです。軍用由来の頑強な作りと視認性の高さを誇りながら、スマートなルックスに仕上がった同シリーズ。陸海空それぞれのバージョンを揃えるなど、男の定番ウォッチとして常に名が上がる名シリーズです。写真はカーキ・オフィサー。

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ベンチュラ

1957年に世界初の電池式腕時計として誕生したベンチュラ。その革新性は、アシンメトリーなケースデザインにも現れています。エルビス・プレスリー氏や映画『メン・イン・ブラック』でのウィル・スミス氏など、著名人が着用する姿が今も昔も多く見られています。そのことからも、同モデルが誕生から半世紀を過ぎた今もなお愛されていることがわかるでしょう。現在は、電池式以外にも機械式ムーブメントを搭載したモデルなど、バリエーションを増やしています。

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ブランド2常に前進あるのみ、そんなアメリカンスピリットの象徴『ブローバ』

チェコスロバキアからの移民として、ニューヨークに渡ったジョセフ・ブローバ氏。1875年に宝石店として歴史を開きます。同ブランドが腕時計作りを始めたのは、なんと従業員の助言からというユニークなエピソードも有名です。高精度な部品の標準化をはじめ、システマチックな製造方式を採用することで、急速にシェアを拡大していった同ブランド。世界初の水銀電池による共鳴振動式腕時計アキュトロンを世に送り出すほか、アメリカ軍への供給、またNASAの科学機器へのシステム供与など、先端技術への積極的な姿勢が見どころです。

アキュトロンIIアルファ

1960年に誕生した名作アキュトロンシリーズ。音叉腕時計と呼ばれる同モデルは、チューニングフォークと水銀電池、電磁コイル、トランジスタによって時を刻む世界初の仕組みで、非常に高精度であることからNASAも採用していました。最も人気が高いのがスペースビュー。スケルトン仕様によって見えるムーブメントは、今でもそのレトロフューチャーなルックスが人気を集めます。写真は、そんな初代をベースにしたアキュトロンIIアルファ。クォーツムーブを大胆に見せたフェイスがユニークです。

プレシジョニスト

音叉腕時計アキュトロンしかり、とにかく高精度な腕時計作りにこだわるブローバ。その伝統を示したモデルが、プレシジョニストです。同モデルに搭載されるクォーツムーブメントは、一般的なもので1秒刻むのに1ステップで針を進めるのに対し、16ステップで針を進めるスウィープ運針を採用。機械式腕時計のような滑らかな針の動きを披露します。その精度は一般的なクォーツ腕時計の約6倍という高精度を誇ります。

ブランド3米軍特殊部隊もリアルに愛用する本気スペック『ルミノックス』

ジーンズのように、タフさこそがアメリカンプロダクトの神髄とするならば、『ルミノックス』はまさしく適役。創業は1989年、ラテン語で明るい夜を意味するブランド名のとおり、独自の発光システムであるルミナイトシステム搭載の腕時計で名を上げます。トリチウムガスを充填したマイクロガスカプセルが昼夜を問わず自己発光する同システムは、特殊部隊用腕時計として開発されました。また、軽量で頑丈なケースはレーシングカーにも用いられるカーボンコンパウンドを採用。200m防水を備えるモデルも多数揃うなど、タフさにおいては他の追随を許しません。現在も米軍への正式なコントラクターであり、ミルスペックを満たすモデルが目白押しです。

ネイビーシールズ3050

アメリカ軍の特殊部隊が、実際に採用しているネイビーシールズ3050。写真はカラーマークシリーズで、視認性の高い文字盤とベゼルが特徴です。ケースに採用されるカーボンコンパウンドは、軽量で頑丈、さらに20気圧防水も備えます。ムーブメントはスイス製クォーツ。43mmのケース径と幅広のウレタンのラバーベルトが、いかにも武骨な男の時計であることを誇示します。

スペースウォッチ

有人宇宙飛行船の開発メーカーXCOR社からの開発要請により、2014年に誕生したスペースウォッチシリーズ。マッハ2.9の大気圏突入時の衝撃や宇宙飛行中の4Gに耐えるスペックを誇るSXC PC カーボン GMT 5020シリーズは、実際に宇宙飛行士からの意見をフィードバックして作られています。ケースはウルトラライトカーボンで、46mm径と大迫力です。

ブランド4鉄道とともに発展した、アメリカンウォッチの生き字引『ボール』

時計産業をはじめ、アメリカンプロダクトはかつて鉄道の発展とともにありました。『ボールウォッチ』もそのひとつ。創業は1891年。創業者であるウェブ・C・ボール氏は、元々湖岸鉄道の監督検査官でした。当時、湖岸鉄道で頻繁に起きていた時刻の乱れによる遅延や事故。ボール氏の指示によって作られた精密な時計を配備することで、それらは改善されることとなります。現在も創業者の精神を受け継ぎ“あらゆる過酷な環境下で、正確に時を告げる”ことを信念とし、エンジニア・ハイドロカーボンやトレインマスターなど、ラインアップされるモデルのほとんどが堅ろうで機能的。信頼のおける精密な作りを披露しています。

パイロットGMT

マガリ・メトライエ氏がデザインしたパイロットGMT。マイクロガスライトを採用したインデックス表記に加え、2か国の時刻表示が可能なGMT針がスポーティな雰囲気を演出します。ムーブメントはスイスETA社製。裏蓋はスケルトン仕様になっており、ムーブメントの動きを楽しむことができます。ケース径は44mmと大きめで、100m防水などそのスペックも確かです。

トレインマスター・キャノンボールII

鉄道の発展とともにあったブランドのイズムを、色濃く反映したトレインマスターシリーズ。写真はトレインマスター・キャノンボールIIで、43mmのステンレススティール製ケースに、自社キャリバーのRR1401を搭載。2つ目のクロノグラフがレトロな雰囲気を宿すも、特許を取得した耐震システム・スプリングロックを採用するなど、高いスペックを誇ります。

ブランド5今再び注目される、アメリカンクラフトマンシップの復権『シャイノラ』

2017年に日本上陸を果たしたデトロイト生まれの『シャイノラ』。アメリカの自動車産業の衰退により、その中心地であったデトロイトは、2013年に財政破綻します。しかし、自動車の街はすなわちモノ作りの街。2011年に創業した『シャイノラ』は、デトロイトの街にクラフトマンシップを取り戻そうと決意します。高級腕時計はスイス製、普及腕時計は中国製が一般的ですが、『シャイノラ』はアメリカ生産にこだわりました。その多くに手作業を採用しているのも、将来への技術継承のためです。数人からスタートしたブランドは、今では世界中の主要百貨店で取り扱われるまでに。古き良きアメリカンウォッチを想起させるルックスは、伊達ではないのです。

ザ・ランウェル

ゴールドカラーのケースやリューズのデザインが、アメリカンクラシックな雰囲気を漂わせるザ・ランウェル。ミッドナイトブルーの文字盤には、アラビア数字とスモールセコンドを採用。レザーベルトとともに、ヴィンテージな雰囲気をにじませます。ウッド製のボックスに収められるあたりにも、クラフトマンシップを感じられます。裏蓋には、ビルト・イン・デトロイトの文字が誇らしげに鎮座。

ザ・ランウェル クロノグラフ

2つ目クロノを採用したザ・ランウェル クロノグラフ。ラグの形やインデックス&針の配色など、アメリカンレトロなルックスに仕上がっています。また、厚みのあるケースとホーウィン社製のカーフレザーベルトが、男心をくすぐります。ムーブメントはクォーツ。デイト表示もあり、また防水性も10気圧と十分なスペックに。ボックス内には、レザーベルトをケアするバームが付属しています。レザーアイテムも得意とする、『シャイノラ』らしい心配りです。

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