自宅でできる。腕時計のメンテナンスをマスターしよう

自宅でできる。腕時計のメンテナンスをマスターしよう

どのようなものであれ、腕時計は繊細な精密機械です。だからこそ、愛機の手入れは非常に重要。では、日ごろから何をなすべきか? 初心者にもわかりやすく解説します。

黒野 一刻

2016.04.09

腕時計
ハウツー

腕時計のメンテナンスに関する5つの質問

「故障が怖い」からといって、購入した腕時計を腕に着けなくなる人がいます。しかし、腕時計は日常的に着用するために買うもの。バイクや車と同じように、自分で手入れをしながら使えば、故障などの不安も払拭できるはず。そこで日ごろから腕時計に何をしてあげられるのか、Q&A方式でお答えします。

Q1:腕時計のメンテナンスって何?

A1:見た目の美しさを保つこと

時計のメンテナンスで重視したいのは、時計の見た目。つまり、時計をきれいに保つことを考えましょう。まずは外装をピカピカに磨き上げ、日常的に時計に触れることが第一なんです。それをやってから、プラスαを考えていきましょう。

ポイント1中身にまで手を出さないこと

専門知識を持っていない素人が時計の裏蓋を開けたところで、何もできません。むしろ、ケース内にホコリを呼び込む原因です。さらには、メーカー保証も受けられなくなるでしょう。

ポイント2自宅メンテとは磨くことと心得て

そもそも機械式時計は、熟練の技術者が組み立て、修理技能の資格も必要なほど精密なもの。クォーツ時計も緻密な電子デバイスですから、これをいじろうというのなら、相当に知識を蓄える必要があります。しかし外装に関しては、技工を凝らした時計はあるものの、多少失敗しても壊すところまでは行きません。機械いじりの欲は抑えて、愛機を磨き上げましょう。

Q2:腕時計のメンテナンスは、そもそも必要なの?

A2:もちろん必要です

「多少汚れても大したことはない」と思いますか? そんなことはありません。たとえば、暑い炎天下の日に、外出していたら汗をかいてお風呂に入りたくなりますよね。時計も同じこと。人間が汗をかいたり、汚れたりしたらリフレッシュしたくなるように、時計もまたリフレッシュすることが必要なのです。

基本対策1-1とにかく拭くことから始めましょう

ステンレススチールは、”サビない鉄”の意味ですが、それも程度の問題です。汚れが付着するなどして、表面にできる酸化を防ぐ膜が壊れるとサビてしまいます。強いアルカリ性物質に弱かったりもします。サビ・腐食を防ぐには、日々時計の表面をきれいにすることが必要です。まずは、拭くための布を用意することがメンテナンスの基本です。

基本対策1-2セーム革で拭くのがおすすめ

シリコンクロスやマイクロファイバークロスもいいのですが、ここで推奨するのは、昔から使われているセーム革製のクロスです。セーム革は表面がキメ細かく、柔軟で拭きやすいんです。時計の表面にキズを付ける心配もなく、静電気が起きないのでホコリを引き寄せません。ケースやブレスレットの表面を包むように拭きましょう。

基本対策2-1歯ぐきにやさしい歯ブラシは時計にもやさしい?

見出しは、冗談ではありません。昔、修理工房に「手っ取り早く、黒ずんでこびりついた汚れを落とすのに、どうしたらいい?」と尋ねたら、汚れも落ちるし、ケースにキズを付けないという意味で歯ブラシをすすめられました。当時は、「専用のブラシが必要」と思っていたので、意外な発見でしたね。

基本対策2-2主にブレスの汚れの巣窟を狙います

歯ブラシが一番効果的なのは、メタルブレスレットです。肌に直接触れて凹凸やすき間だらけ。そこに汗と結合した黒ずみ汚れがこびりつきます。歯ブラシならば、細かい刃先が入り込んで、汚れを引き剥がし、外へとはじき出すこともできます。歯ぐきにやさしいタイプなら、それこそメタルにキズも付きません。理想的です。

基本対策3-1マジックのような、つまようじの汚れ落とし

歯ブラシではやさしすぎて落とせない、しつこいこびりついた汚れにうってつけの方法は、何とつまようじです。ウッド素材はメタルにキズがつきにくいわりに、ブラシの毛よりも硬いという絶妙の性質があるのです。やさしいタッチを心掛ければ、時計をキズ付けず、汚れを落とせます。

基本対策3-2ブラシで落とせなかったところを狙います

写真のバックルの板のように凹凸のある場所、あとは、ブレス、ラグとストラップの接合部の周り、裏蓋やベゼルとケースとの接合部。それらの場所に、歯ブラシの毛先では落としきれない汚れがあったら、ようじの先でなぞりましょう。なぞるだけでも、かき落とすという感じで汚れが落とせ、まるで魔法のようです。

Q3:もう少し効果的なメンテナンス方法はないの?

A3:専門の用品を使えば可能です

セーム革はさすがにないけど、シリコンクロスでも代替できるし、歯ブラシもつまようじもチープっぽい。そう思われるかもしれませんね。でも、きれいにするということでは、多少専門的な用品もあります。それらについても、解説していきましょう。

応用対策1-1大型ブラシは巨大歯ブラシと思いましょう

日常的に時計磨きが習慣化して、効率的に作業をしたいと思ったら、豚毛や馬毛のブラシを入手しましょう。一段と長くしなやかな毛で、毛先はすき間の部分に入りやすく、しつこい汚れを発生させない予防的な磨きにもってこいです。1段やさしい、巨大歯ブラシです。

応用対策1-2日常で使用しているものが意外と便利です

豚毛ブラシを時計のケースに使ってみれば、歯ブラシよりも広範囲を磨くことができます。汚れ対策が日常的になった人なら、セーム革の拭き掃除とこんなブラシのすき間掃除で十分。もし黒ずみ汚れが見つかったら、歯ブラシやつまようじの出番です。

応用対策2-1どうしても落ちないくすんだ汚れに

自分自身が汗っかきで脂性だったことがあるので、よくわかるのですが、身につけるものの傷みが早く、時計もブレスやケースの裏がくすんだような感じになることってあります。そういう脂汚れっぽいくすみは、拭いただけではなかなか落ちません。そういう時は、金属汚れ専用のクリーニング液を使ってみましょう。使い方は実に簡単です。

応用対策2-2シュッとひと吹き。あとは拭くだけ

たいていクリーニング液はスプレー容器に入っているので、くすみの目立つ部分に薬液をひと吹き。汚れの程度によっては間を置いて、手早く布で拭き取りましょう。成分によってはパッキンに悪影響がでるかもしれませんから、裏蓋やベゼルとケースとの接合部に直接かけないように注意してくださいね。

応用対策3-1メタル素材以外のストラップのお手入れ

メタルブレス以外のストラップも手入れが必要ですね。ただ、レザーストラップは、基本は拭くだけでOKです。水分を余計に含ませると、むしろ傷みを助長します。乾燥しすぎが気になるなら、色落ちしないレザー用のオイルを表にだけ、薄く塗布してください。また、爬虫類向け、非爬虫類向けがあるので、ちゃんと確認のうえで使用しましょう。

応用対策3-2ラバーストラップなら水洗いも可能

ラバーストラップは、水洗いして大丈夫です。とくに、ダイバーズで海水につけたのなら、ケースから取り外し、人肌くらいのぬるま湯にひたしましょう。あとは乾燥した布で拭き、ぬるみを残さないように。穴周りの汚れは、歯ブラシで落としてしまいましょう。

Q4:時計メンテナンスのNG項目は?

A4:「これは避けたい」3つの項目をお伝えします

素人が自分でメンテナンスを行う場合、これまでに紹介した手順だけで十分な効果が得られます。それでも、ほかの方法も試してみたいという方には、これから紹介する3項目については絶対NG項目として認識しておいてください。

NG項目1キズ消しは、専門家におまかせましょう

ケースや風防に、キズが付いた場合、修理に出すことをおすすめします。キズを消す=研磨する=非常に細かいキズを付けて、キズ自体を目立たなくすることを意味します。仮に素人が研磨しようとしても、スチールやサファイアガラスは研磨が難しく、表面仕上げのおかしな部分を作ることにつながりかねません。素人には避けていただきたいNG項目の1つです。

NG項目2ケースのサビ落としも危険です

ダイバーズなどをハードユースしていると、ステンレスにうっすらサビが浮いてしまうことが多々あります。そんな状況に最適なピンポイントでサビ落としができる、ペンタイプのワイヤーブラシも市販されています。サビの部分を払うことでサビの除去が可能なのですが、やはり心配なのはキズを付けてしまわないかということ。素人で行うには、要注意したい作業の1つです。

NG項目3機械式時計の起動には大きな負荷がかかっています

止まった機械をイチから起動させるということは、内部に余計な摩擦を生じさせる時計にとって非常に負荷のかかる工程です。どうしても長期間着用できない場合は、ワインディングマシンを利用し稼働状態を維持しましょう。愛情を持って接し、動かし続けてあげることこそ、時計にとって一番やさしい状態なのです。

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