パイロットウォッチ攻略。人気ブランドと選び方の基本

パイロットウォッチ攻略。人気ブランドと選び方の基本

パイロットウォッチは腕時計の重要なジャンルの1つですが、歴史や特徴をご存じないという方も多いはず。今回はパイロットウォッチの解説と、人気ブランドをご紹介します。

黒野 一刻

2018.07.28

腕時計

まずはじめに、パイロットウォッチの定義について

パイロットウォッチはダイバーズウォッチと異なり、工業規格のような客観的基準がありません。ドイツでは『ジン』というメーカーが中心となってドイツ工業規格に基準を作る動きはありますが、数値化しづらい視認性を中心に規格を定めているためパイロット用という機能の決定的な条項はないのです。ですが、現場での数々のトライアンドエラーを乗り越えてブラッシュアップされてきた命を守る計器としての腕時計、それらが今もなおパイロットにとって大切なツールであることは間違いありません。

パイロットウォッチ。その誕生から現在まで

腕時計と飛行機はともに20世紀初頭の発明品。もともと腕時計は、パイロット用の航法の道具として必要とされていました。航空機と腕時計の進化は、誕生時期からしてほとんどシンクロしており、時間を測定することが飛行機の操縦にとって非常に重要だったわけです。そんなパイロットウォッチの歴史について、より詳しく紹介します。

誕生期飛行機の位置の割り出しに必要な道具として誕生

飛行機の位置の割り出しに必要な道具として誕生

GMTGMT

各種計器がなかった頃の船舶と同様で、太陽の位置と飛行経過時間から自分の位置を割り出さないと事故につながる。これが20世紀の前半、パイロットたちが腕時計を欲した大きな理由です。アメリカでチャールズ・リンドバーグ氏や彼の師のウィームス大佐が航法を確立し、それに伴い時間計測や計算に便利な腕時計の開発が進みます。

今では腕時計の重要なデザインの1つとなった回転ベゼルで秒計測を行うというアイデアも、航空時計により確立したもの。スイスでは『ロンジン』が、彼らの要求に添う腕時計を製造していました。

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発展期20世紀半ばから進む、航空時計の分化

世界中の時計メーカーが航空用と銘打った腕時計を開発しますが、『ブライトリング』が、クロノグラフウォッチに画期的な機能を持たせます。1942年にクロノマット、52年にナビタイマーと、回転計算尺を持つ時計を登場させたのです。特にナビタイマーは、死活問題ともなる燃費計算などの計算もできる航空用計算尺を装備し、世界中のパイロットに大ヒットを飛ばします。

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現在空へのロマンを感じる、タイムピースとして所有する

航空機の発達とともに、航法関係の計算は航空機の電子機器自体が行うようになりました。しかし、機器がダウンしたときなどの緊急用に、タフで高機能な腕時計を求めるパイロットは絶えず、クォーツも、機械式も、航空用腕時計は進化を続けています。

一般人にとっては、視認性に優れている以外の機能性は無用のデザイン。しかし、タフネスや高い精度は、ロマンを感じさせる要素としてファンの根強い支持を受け続けているのです。

パイロットウォッチに込められる機能と意匠

数値化できない、空における“必要”な機能が詰まったパイロットウォッチ。それは視認性をはじめ、強度、計器としての各種機能など多岐にわたります。4つのポイントから、その魅力をレコメンド。

機能1とっさの判断が求められる空では、視認性こそが命

パイロットが過ごす超高度の世界は、照明を消してしまうと昼でも暗いという環境です。したがって、腕時計の機能として最重要視されるのは視認性。夜光塗料をふんだんに使うなどして、インデックスと針の視認性を確保することはパイロットの命に関わる必須の仕様なのです。

この『ジン』の時計はかつてNATO軍が正式に採用していたモノ。シンプルで余計な意匠が省かれており、とにかく見やすい文字盤が特徴です。さらに、文字盤の外周リングをリューズで回転させることで、分や秒計測に用いることもできます。これこそパイロットウォッチの機能美が集約された姿といえるでしょう。

機能2航空機マニアでなくとも心踊る、ユニークな補助機能の数々

『ブライトリング』が初代クロノマットで導入し、ナビタイマーで完成させた計算尺機能。多くのブランドが追随し、付随する機能も多彩になっています。たとえば『ハミルトン』のこちらの腕時計は、機体の最大離陸重量を備忘のために表示させ、さらに摂氏と華氏の温度換算スケールを印字。ベゼルも時計を方位計代わりに使うときのための目盛り入りと、ここまでくるとその独創性の豊かさに頭が下がります。

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機能3単純なタフネスもまた、持ち味

もともとミリタリー系のパイロットウォッチは、現代のスポーツウォッチの原型です。震動に見舞われ、暗くて見えず、周りは磁器だらけ……。そんな状況に対応するスペックを模索していたら、タフで、見やすく、耐磁性にもすぐれた時計になったわけです。あらゆる外力に強い上位の『Gショック』のトリプルGレジストも、その延長上にできた腕時計の1つなのです。

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機能4昨今ではデジタル式のハイテクモデルも

今日の最先端のパイロットウォッチは極めて高機能なクォーツ時計になっていますが、時刻表示はアナログ式というのがいまだに多いもの。パイロットの方の話によれば、瞬間的な時刻の把握はアナログ時計のほうが見やすく、誤解のない数値表示を求めるならばデジタル表示が良いそうです。こうした近未来的なデジアナモデルも、“見た目”のためのデザインではなく、機能的な洗練を求めた結果なのです。これがパイロットウォッチ? という違和感があるかもしれませんが、そんな背景を知ると所有欲も沸いてくるというものです。

ルックスも大事。パイロットウォッチの選び方

パイロットウォッチの定義に客観的な指針がないため、「どうやって選んだら良いのだろう」と悩むのも無理はありません。ですが、それゆえにディテールや一部の機能さえ抑えておけば自由と言う捉え方もできます。ここではとくにその見た目を重視して、パイロットウォッチの選び方を見て行きましょう。

選び方1細部の“パイロットウォッチらしさ”は大きなポイント

パイロットウォッチにはシンプルなモノも多機能なモノもありますが、名機と呼ばれるモデルには得てしてパイロットへの配慮が滲にじみ出ています。この『ハミルトン』はシンプルな見た目ですが、分や秒の計測に力点を置いて、分・秒のインデックスを大きくしています。これは、時速数百キロで移動する航空機の航法ツールであることがゆえん。回転計算尺のようにデザインが複雑なものでも、それはパイロットのためのもの。そんな背景を語れる時計を選ぼうという動機は大きなポイントであり、同時に良いアクセントとしても機能します。

選び方2レザーベルトも、男らしさが宿るパイロット仕様のモノを

現代的な航空時計なら着け心地を重視すれば良いのかもしれませんが、クラシックな機械式時計を選ぶならベルトにもこだわりを持ちたいところ。たとえば、この2穴・2ピンで留めるバックルは、レバーが多いコックピットという狭い場所でバックルを引っ掛けて外れないようにという配慮を再現したもの。また、ベルトを鋲で留める意匠も、より強度を求めた古い航空時計の名残りです。現代では必要のない要素なのかもしれませんが、ミリタリーの現場で重用されたディテールは現代において男らしさの象徴として腕元で輝きます。

選び方3スーツシーンでの着用も視野に入れて選びましょう

緻密なインデックスと、各種インダイヤルが描き出すメカニカル感。これらは誠実さと洗練が求められるビジネスの場においても、有用な意匠として生きてきます。ここで取り上げた『ハミルトン』のカーキ アビエイション パイロットは航空時計らしい文字盤レイアウトながら、遠目にはクラシカルな印象も演出。文字盤が見えるほど近づけば、ギアっぽさも感じられるでしょう。平日のオンから愛用できるパイロットウォッチの1つです。

厳選。パイロットウォッチのおすすめブランド&モデル

ここで取り上げるパイロットウォッチは、比較的入手しやすいモデルを厳選しました。特に10万円未満の時計は、現代的なクォーツウォッチで時計初心者にも扱いモノが揃っており、50万円未満は現代的で実用性の高い機械式時計、50万円以上はブランドの背景にも格式が漂う大御所級の大定番になります。

▼10万円未満のパイロットウォッチ

1本目『ハミルトン』カーキ アビエーション パイロット

伝説的な軍用時計の名を冠するコレクションの作品で、ミリタリーなパイロットウォッチらしさを醸し出しています。古い腕時計ではその視認性からミリタリー系にもシルバー文字盤は重用されており、分・秒のインデックスを大きくしたスタイルは1940年代の航空時計に多く見られる仕様です。クォーツ式の腕時計ですが、そんなアンティーク感を再現している点が秀逸です。

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2本目『ハミルトン』カーキ パイロット フライトタイマー

分・秒のインデックスを大きくした古典的な時計をベースに、カウントダウン式の回転ベゼルを装備。デジタルディスプレイも備えて、現代的なギアっぽさを強調しています。10時位置のボタンをプッシュして、扇型のディスプレイでクロノグラフ、第2時間帯、カレンダー、アラーム、タイマーのいずれかをセレクトし、6時位置の窓で表示します。近未来的なフェイスに対し、肉厚でステッチの利いたレザーストラップの味感がたまりません。

3本目『カシオ』Gショック GW-A1100FC-1ADR スカイコックピット

耐衝撃性にくわえ、遠心重力、細震動にも耐性を確保したトリプルGレジスト構造を導入した『Gショック』の上位モデルです。電波受信機能、ソーラー発電機能、ワールドタイム機能などを備え、計器然としたアナログ表示に徹しています。武骨なルックスながら、リューズやボタンの操作性にも配慮が行き届いています。

▼50万円未満のパイロットウォッチ

4本目『ハミルトン』カーキ アビエーション Xコプター

カーキ アビエーションは名前に”X”が付くと、特殊な表示機能付きを示します。このモデルは、9時位置の窓に機体の最大離陸重量を表示させ、燃料など積載物の重量変化が起こったときに差を算出する時に便利な逸品となっております。名称から想像がつくとおり、ヘリコプター向けの航空時計というコンセプトで、スモールセコンドや裏蓋はヘリコプターのローターをイメージしています。

5本目『ジン』204.ST

この時計のトノー型(樽型)ケースは、『ジン』などのメーカーが、1970〜80年代にNATO軍の制式装備として納入していた時計を再現したもの。大型のバーインデックスと針にたっぷり夜光塗料を配し、高高度の暗いなかでも時間を確認できることに重点を置いたデザインです。インナーベゼルのインデックスにより分・秒の経過時間の計測も可能です。

6本目『IWC』パイロット・ウォッチ・マークXVII

1939年にイギリス空軍に制式採用されたマークXIから続く、パイロットモデル。4800A/mというJIS第一種に相当する耐磁性を備え、このマークXVIIは2012年に登場し、現代的なデザインにリバイスされています。クラシック路線に回帰したマークXVIIIの登場が発表されているので、生産終了が確定的。店頭在庫の注目度もアップしています。

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7本目『ジン』857 UTC テスタフ

ドイツのアーヘン応用工科大学と『ジン』が共同して作った航空時計の規格がTESTAFです。視認性、耐震動性などの基準をこの腕時計は満たしています。スッキリとしたダイヤルデザインで、第2時間帯表示を装備。ケース内の乾燥状態を守るドライテクノロジーやデギメントと呼ばれる硬化表面処理を施した強靭さなど非常に優秀な腕時計です。

▼50万円以上のパイロットウォッチ

8本目『ブライトリング』ナビタイマー01

1952年に登場した、航空用回転計算尺を装備したモデルです。アウトベゼルを回せば、それに連動して、文字盤外周のリングが回転し、計算ができます。基本操作を熟知したベテランパイロットには、現代のデジタルな計器に頼るより、この時計の計算尺のほうが使いやすいという人さえいるほど。現行モデルは46mmの大型ケースも印象的です。

9本目『ブライトリング』クロノマット44 フレッチェ トリコローリ

1942年に汎用回転計算尺を搭載して登場しましたが、83年機能を一新。現代的なスペックを備えたクロノグラフに衣替えし、イタリア空軍アクロバットチームの公式時計に採用。視認性、操作性、装着感、精度など死角のないクロノグラフとして高い評価を得ており、現行ではハイレベルな自社ムーブメントも搭載。現代で最高峰のクロノグラフです。

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